リスクと報酬:メルヴィル ワイナリーにおけるシラーのワイン醸造
Risk and Reward: The Making of Melville Syrah
リスクと報酬:メルヴィル ワイナリーにおけるシラーのワイン醸造
巷でよく耳にする、「大きな報酬を得るには大きなリスクが伴う」。多くの人にとって、それはあまり気にも留めない決まり文句に過ぎません。しかし私たちにとっては、大変大きな意味を持つ言葉なのです。私たちのワイン造りの哲学の土台であり、30年以上農業を続けてきた今でも、私たちのすべての決断の原動力となっている考えなのです。そしてもし、これが簡単に実行できることならば、誰もがやっていることでしょう。
メルヴィルのやり方
メルヴィルのことをご存知の方なら、私たちのやり方が少し変わっていることをご存知でしょうー 私たちはコントロールを放棄するのです。これは人間にとって難しいことですが、私たちのワイン造りのプロセスには欠かせません。私たちは母なる自然から隠れることなく、母なる自然に頼っています。他の人が思いつかないようなリスクを取ることができるように、私たちは自然が成すすべての工程に関与するようにしています。その違いは、すべてのワインに表れていますが、特にシラーには顕著です。多くの品種がそうであるように、シラーは世界中のさまざまな気候の場所で栽培することができます。土壌の質、畑の傾斜、気候の違いにより、アロマ、フレーバー、テクスチャーが異なるシラーが生まれます。では、世界中のどのような気候、どのような土壌でも栽培可能な果実から、シラーの個性を出すにはどうしたらよいのでしょうか。私たちの答えはシンプルです。
リスク
私たちの畑はサンタ・リタ・ヒルズの中心部の、時折霧に包まる太平洋沿岸に位置しています。数種類のクローンのシラーを異なる土壌、そして風雨にさらされる厳しい気候の中で栽培し、それらがギリギリのところで生き延びると何か不思議なことが起こることを目の当たりにしてきました。私たちは、文字通り「崖っぷちに植える」と表現しています。私たちは、冷涼な気候で土壌が不安定な場所で果敢にブドウを栽培し、平均よりも長い成長期で育てます。ブドウの樹が冬の休眠から目覚めるのは2月下旬で、11月中旬まで収穫は行いません。例年、つるに実った果実の40~50%は切り落とし、そのまま地面に落としています。多くのワインメーカーにとっては無駄なことかもしれませんが、私たちにとっては、最高品質のブドウだけを確実に収穫するための大切な手段です。私たちは、このプロセスではさまざまなことが起こりうるという考え方に立ち、そこから逃げないようにしています。このリスクを負うことの報酬は?―最高のシラーの誕生です。
報酬
寒冷地であるサンタ・リタ・ヒルズのシラーを飲んだことがある人なら、誰もが特別なものだと言ってくれるでしょう。自然と向き合い、丁寧に農業を行うことで、ブドウの樹が少量の凝縮した果実を実らせることができるようになりました。厳しい気候、異なる土壌タイプ、クローン、そして丁寧な栽培方法により、爽快なアロマ、美しい重量感、口当たりのよい酸を持つ個性的なシラーを生み出します。とはいえ、私たちの言葉を鵜呑みにする必要はありません。私たちの2018年のドナズブロックのシラーは、Wine & Spirits誌の“トップ100ワイン”に選ばれ、専門家から高い評価を受け、多くの人々に愛されています。私たちの2018年ドナズ ブロックのシラーを気に入っていただけたなら、ドナの妹分である私たちの最新リリース、2018年のエステート シラーもきっと気に入っていただけると思います。ドナズ ブロックのシラーと同じように注目され、リーズナブルな価格のシラーとして切望されるこのワインは、世界中で試飲された何千ものワインの中から、ジェブ・ダンナックの「2020年のトップ100ワイン」に掲載されました。ワイン・エンスージアストのマット・ケットマン氏は、このワインを「細かくしたライラックの花、ダークプラム、キレのある赤スグリのアロマ」と表現しています。口に含むと、コショウのようなスパイスがブラックラズベリー、ラベンダー、ローズマリーのフレーバーとうまく調和して、野性的な活力が感じられます。
人生における最大の報酬は、最大のリスクの結果です。私たちは毎日ブドウ畑でこれを実践し、結果を生み出してきました。すでにリスクは我々がとったので、皆さんは失うものはありません。ぜひメルヴィルのシラーを手に取って実感してみてください。
そして、もしあなたが崖っぷちで生きることを実践してないのであれば、もしかしたらスペースを取りすぎているかもしれないですよ。
頑張りましょう!
-チャド・メルヴィル(共同設立者・ヘッドワイングロワー)
このブログで紹介されたワインやワイナリー
当主ロン・メルヴィルの愛妻、ドナの名前を冠する、クールクライメイトの最上級のシラー。

サンタ・リタ・ヒル ズ を 代 表 す る エ ス テ ート
メル ヴィル の 創 設 者 、 ロン・メル ヴィル は 父の影響から幼いころより土に親しみ、1987年 からソノ マ の ナ イツ・ ヴ ァレ ー で ブドウ農園を始めました。シャルドネ、カベルネ・ソーヴィニヨン 、 メル ロ ー など を 栽 培 し 、その品質の高さから周囲の著名なワイナリーがこぞって買い付けていました 。 メルヴィル一家は 1997 年にソノマからサンタ・バーバラへ移ることを決意しました。長年思い描いていた冷 涼な土 地でのピノ・ノワールや シャルドネ造りをサンタ・リタ・ヒルズで始めることにしたからです。 海から1 0マイル(16 キロ)ほどしか離れていないこの地域は、朝夕に霧が立ち込め午後は海からの冷たい風が吹きこみます。この涼しい気候はシャルドネやピノ・ノワ ー ル、 シラーなどの栽培に最適であるだけでなく、生育期が長く、凝縮した味わいを生みます。土壌は石灰質の岩が含まれる砂質で、酸がしっかりとした果実を作りま す。この土地の素晴らしさを確信したロンは、サンタ・リタ・ヒルズのAVA認証(2001年)にも大きく貢献しました。現在メルヴィルの120エーカーの 自社畑では、16種のピノ・ノワールのクローン、シラーを9種、シャルドネを6種栽培しています。メルヴィルでは、それぞれのクローンの持つ特徴や性質を 重要視し、畑でも場所を分けて栽培しています。また醸造の際にはクローン毎に発酵を別々の樽で行い、その個性を最大限引きだす努力を惜しみません。ロンの 息子、チャッドは1997年から父や兄弟と共にブドウ栽培に携わってきました。家族と共に、自分たちの土地で自らの手でブドウを育てワインを造る、この工 程を全て自社で行うことに大きな誇りを持っています。2015年に醸造家としてのポジションにつき、ブドウ栽培やワイン造りに対する情熱をますますワイン に注いでいます。